
「19アンタレスの巻き心地が少し悪くなってきたなあ。でもメーカーにオーバーホール出すのは時間もお金もかかるし…」
こんな悩みを持つ人は、自分で19アンタレスのオーバーホールに挑戦してみませんか?
全ての工程の写真を載せて、19アンタレスのオーバーホールのやり方(「分解」と「組立」)を解説していきます。
- 19アンタレスをオーバーホールするための、全ての工程を写真つきで解説する
19アンタレスのマイクロモジュールギアはとても細かい歯面なので、最高機種といえどもグリス切れが発生しやすい。
マイクロモジュールギアはグリス切れすると、「ギアのゴロつき」「シャリ感」が発生しやすいです!
そんな違和感が発生した時にボディを開けてグリスを塗ると、大体の場合で滑らかな巻き心地が復活します。
いちいちメーカーにオーバーホールに出していられないし、悪くなった巻き心地で使い続けるとギアが本当に傷んでしまいそう…。
だからこそ、自分でドライブギア・ピニオンギアにグリスアップできるようになれれば、ずっと快適に19アンタレスを使い続けられます!!
それでは、19アンタレスの分解工程から順番に解説していきます。
ハンドルとスタードラグを外す
最初にスプールを抜いておいて、さっそくハンドルを外していきます。
最初にナットを隠しているリテーナを外します。ネジは裏側に隠れています。
リテーナを外すと、ハンドルを固定するナットが見えます。
アンタレスのハンドルは特殊なので、ナットを外すために専用工具が必要です。
12アンタレスや16アンタレスDCにはハンドルナット専用レンチが付属しているのですが、19アンタレスでは別売り(^^;)。
専用レンチを持っていない人は、釣具店でシマノにパーツ注文をして購入できます。
- リールレンチ(06ANTDC リールレンチ)—350円+税。
この専用工具がないとハンドルを外せないので、19アンタレスの分解自体ができません!! 必ず入手してください。
私は12アンタレスの純正レンチを持っているので、それで外しました。
19アンタレスのハンドルは特殊な形状をしています。他機種のハンドルとの交換は難しい…?
ノブのキャップはとても外しにくい!! ゴム手袋装備でなんとか外せました。
ドライバーやペンチを使うとカンタンにきずがつきそうです。
次にスタードラグを外します。スタードラグの構造は今までものと同じです。
そして座金、ナット、バネなどを外していきます。ここの順番も変化なし。
下の写真のような順番です。
これで、ハンドルとスタードラグのパーツの取り外しが完了しました。
フレームとサイドボディの開封
本体フレームとサイドボディ(本体A組)を固定しているネジを外します。ネジの位置は、写真のマークしてあるところです。
マークしている3つのネジを外します。3本ともゆるみ止めが塗られているので、しっかりネジを押す力を入れて外してください。
ネジを外すと、フレームとサイドボディが分離します。
マイクロモジュールギアの歯がとても細かい!! エキサイティングドラグも搭載されていて、ベイトフィネスのリールのように見えます。
そして、サイドボディ(本体A組)の様子。
ベイトリールの巻き感が悪くなった時の対策の一つとして、このサイドボディにある「ワンウェイクラッチの清掃」は、ぜひ試してもらいたい作業です。
ギアやベアリングではなく、このワンウェイクラッチが原因だったケースはよくあります。
ドライブギアとピニオンギアを外す
19アンタレスの心臓部である、ドライブギアとピニオンギアを外します。
19アンタレスはエキサイティングドラグ搭載モデルなので、音出しピン関係のパーツがついています。
そのせいで、スタードラグ座金も小さい…。
19アンタレスの巻き感にゴロつきやシャリ感を感じた時は、このギアの取り外し工程までをしてグリスアップすると、巻き感が改善する場合があります。
別にギアを外さなくても、フレームとサイドボディを外したところでギアに直接グリスを塗り、再び組みたてるだけでもOKです。
ひとつ前の工程の「サイドボディのワンウェイクラッチ」の清掃と、この工程の「ドライブギアとピニオンギア」の清掃・グリスアップ。
ベイトリールの巻き感が悪くなっても、この二つを行えばだいたい改善します。
(それでダメなら、ベアリングが原因の可能性が高い。)
すべて分解するのは無理でも、ここまでの工程までを覚えれば、その価値はとても高いです!!
ドライブギア軸の分解
次はドライブギア軸を外し、分解していきます。
中古リールをバラしていると、このドライブギア軸のベアリングが錆びていることが時々あります。
ネジ2本を外して、ドライブギア軸を抜き取ります。
上位機種では、写真のようにベアリングがネジで固定されています。
このネジはゆるみ止めで固定されているので、かなり固いです。ネジ穴をつぶさないように注意してください!!
また他の機種の「左ハンドル」では、このネジは「逆ネジ」になっています。
おそらく19アンタレスもそうだと思うので、回す方向にも注意です。
(私は以前回す方向を失敗しました(^-^;)
>>>16アルデバランBFSのオーバーホールの注意点【逆回しのネジ穴】
固定ネジを外すと、ベアリングやギアを外すことができます。
これでドライブギア軸の分解は完了です。
クラッチのパーツを外す
クラッチカムやクラッチレバーなどのパーツを外していきます。
最初にクラッチカム抑え板のネジ2本を外します。抑え板の裏には座金が一枚あるので、うっかり忘れないように。
(私は忘れていたので、洗浄中に気づきました(^-^;)
バネの圧力がかかっているので、パーツが飛ばないように抑えながら外していってください。
クラッチカムを外し終えたら、次はクラッチレバーです。
レベルワインダーの方からドライバーを差し込んで外します。
これで全てのクラッチパーツを外せました。
クラッチツメの動きを滑らかにするための「クラッチツメブッシュ」が無くなっていますね。
上位機種には必ず付いていたのに…。
SVS側サイドボディ(本体B組)を外す
順番は前後しても大丈夫ですが、このあたりでSVS側のサイドボディを外します。
小さいEリングで固定されているので、私は針や小さいマイナスドライバーを隙間に差しこんで外しています。
Eリングを一つ外すと、フレームから抜き取れます。
ベアリングなども外して、この作業は終了。
ついでに、このサイドフレームを受ける留め具も外してみましたが、やる必要はなかったですね(^^;)。
サムレストを外す
次はリール上部のサムレストを外します。リールの天井部分ですね。
写真でマークしてある3つのネジを外します。
注意してほしいのが、赤丸のネジ。サムレストとフレームの間に、座金が一枚ありました。
しかし分解図には座金が書かれていないので、個体によっては無いかもしれません。
レベルワインドとウォームシャフトを外す
次はレベルワインドとウォームシャフトの取り外しです。
まず、レベルワインドガードを外します。
次にレベルワインド受けを外します。大きなマイナスドライバーを使うと外しやすいです。
そして、座金とウォームシャフトピンも抜き取ります。
次に外すのはEリング。私はマイナスドライバーを隙間に差し込んで外します。
Eリングを外すと、ウォームシャフトを抜き取れます。
写真にあるウォームシャフトの白いプラスチックブッシュは、ベアリングに交換することもできそうですね。
ウォームシャフトギアのEリングも外せば、分解は完了。
ウォームシャフトの両端には座金があるので、うっかり無くさないように注意です!!
メカニカルブレーキノブ組の分解
あまり分解しなくても良さそうなところですが、仕組みを知るためにメカニカルブレーキノブを分解してみました。
このメカニカルブレーキ用ナットを外すと、再び付け直すのは面倒そう…。
そしてサイドボディの裏側のネジ4本を外すと、メカニカルブレーキノブ組を外せます。
音出しピンなどがありますが、特に分解する必要はなかったですね(^^;)。
ちなみに、サイドボディに付いている、ピニオンギアを支えるX-SHIPのベアリング。
これはボディの裏側からじゃないと外せない仕様に変わっていました(-_-;)。
スプールのベアリングを外す
次はスプールに付いているベアリングです。
19アンタレスのスプールのベアリングは、サイレントチューンのゴムがベアリングの外周などについています。
スプールのベアリングを外すには、ベアリングリムーバーが必要。私はヘッジホッグスタジオさんの「スプールベアリングリムーバー」を使用しています。
スプールのフチにキズがつかないよう、セロテープをフチに貼ってから外します。
Oリングや座金もあるので、無くさないように注意。
これで、19アンタレスの分解の工程は全て終了です。
19アンタレスの分解まとめ
19アンタレスのすべての分解工程を紹介してきました。
まず、ハンドルナットを外す専用レンチを持っていない人は、必ず入手してください!!
ハンドルを外せないと、オーバーホールができません(^^;)
そして19アンタレスのつくりですが、分解手順は他のリールとあまり違いはありません。
19アンタレス特有のメカニカルブレーキノブ組などもありますが、正直ここは分解する必要はありません。
水没させたり、よっぽど汚れた時にするぐらいで十分。
昔の初代アンタレスと違い、19アンタレスはそこまで難しくありません。
全て分解するのは怖いという人でも、「ドライブギアとピニオンギアを外す」工程までなら、リスクは少ないので挑戦する価値あり。
19アンタレスの巻き感にゴロつきやシャリ感を感じた時、「ワンウェイクラッチの清掃」と「ギアのグリスアップ」で改善する可能性は十分あります!!
次の章から、19アンタレスの組立工程を解説していきます。
なお、組立時に使用するグリスやオイルは、私は全て「Bored」社のものを使用しています。
私がリールのオーバーホールで使っているBored(ボアード)のオイルとグリスを紹介! 耐久性が高い100%化学合成油のケミカルです。
ハンドルとスプールの組立て
まずはスプールやハンドルなどの周辺部のパーツを組み立てます。
19アンタレスのスプールシャフト部のベアリングは、サイレントチューンのゴムが付いています。
SVS部にベアリングを入れるとき、グイッと押し込まないと奥まで入りません。
ピニオンギアを支えるX-SHIPのベアリングは、ボディ内側から入れ、バネで固定。
ハンドルも組み立てて、スプール、サイドボディなどの周辺パーツの組立が完了。
「ANTARES」と書かれたメカニカルブレーキのキャップは入れにくいですね。
組みあがってハンドルやスタードラグが邪魔する状態で、このキャップを外してしまったら、再び付けるのはなかなか大変そう…。
レベルワインドの組立て
次はメインフレーム部分の作業です。まずレベルワインドを組み立てます。
まずパイプとガイド棒をフレームとレベルワインドに差し込みます。
次はウォームシャフト。ギアや座金の順番は写真のとおりになります。
右の小さい座金は、分解図では2枚ですが、この個体には3枚入っていました。
一枚は薄いものなので、個体差の調整分かもしれません。
これらのパールをウォームシャフトにはめます。
白いプラスチックブッシュはベアリングに変えても良さそう(^^)。今回は変えませんが…。
組んだウォームシャフトをパイプの中に通します。そして、座金とEリングで固定。
次はウォームシャフトピンを入れます。ピンにも座金があるので、忘れないように注意。
ウォームシャフトピンを入れ、キャップを締めます。
この時ウォームシャフトギアを手で動かして、レベルワインドの動きに引っ掛かりがないかを確認してください。
両端で引っ掛かりがある場合があるので、そういう時は座金枚数で調整したり、ウォームシャフトピンの向きを変えたりすると改善する場合があります。
問題なかったら、レベルワインドガードを付けて、レベルワインド組の組立ては完了。
クラッチ組の組立て
次はクラッチ組の組立てです。
まずはフレームに本体Aシートを取り付け。クラッチパーツがシートの上を動きますので、しっかりグリスを塗っておいてください。
次はクラッチレバーの取り付け。
銀色のクラッチプレートはクラッチ操作のたびに動くので、しっかりグリスを塗っておいてください。
ねじ止めすれば、取り付けは完了。
次はクラッチカムの取り付け。
銀色の抑えたとベアリングの間にある座金を忘れないように注意。バネは足が長い方が下(メインフレーム側)です。
バネの圧力で飛ばさないように注意して組立て、抑え板をねじ止めして組立て完了。
サムレストとブレーキ側のサイドボディを付ける
じこれの順番は前後しても大丈夫ですが、このあたりでリールの天井のサムレストと、ブレーキ側のサイドボディを付けます。
まずはサムレスト。
19アンタレスの分解図には載っていないように見えますが、この19アンタレスには座金が一枚付いていました。
この座金をフレームとサムレストの間に入れます。
そして3本のネジを締めて、サムレストの取り付けは完了。
次はSVSブレーキ側のサイドボディ。
棒をフレームの穴に通して、Eリングで固定します。これで取り付けは完了。
ドライブギア軸の組立て
次はドライブギア軸の組立てです。
中古リールをオーバーホールするとき、このドライブギア軸のベアリングがよく錆びています。
ベアリングや差し込む穴部によくグリスを塗った方が無難だと思います。
ネジ2本で固定して、ドライブギア軸は完了。
ドライブギアとピニオンギアを付ける
次はベイトリールの心臓部であるドライブギアとピニオンギアです。
ピニオンギアのパーツはこちら。
そしてドライブギア。19アンタレスはエキサイティングドラグ装備なので、音出しピン用のパーツがあります。
音出しピンのパーツをドライブギアの穴に入れ、ドラグをセット。音出しピンがあるので、ドラグ座金の外周が小さくなっていますね。
そしてドライブギアとピニオンギアをフレームに付けます。
今回はドライブギアのグリスには、Boredの「DELTA」を使用しました。
サイドボディとハンドルを付ける
サイドボディをネジ3本で固定します。それぞれネジの長さが違うので、位置を間違えないように注意。
次はたくさんの座金やバネ、ナットの取り付けです。
これらも順番や向きに注意。反っている座金は互い違いの向き <> になるように付けます。
そしてスタードラグをはめ、抑えながらハンドルを付けて、ナットで固定。
最後にリテーナを付ければ、19アンタレスのオーバーホール・組立ては完了です!!
19アンタレスの組立てまとめ
前回の記事と今回の記事で、19アンタレスのオーバーホール、分解と組立てのやり方を解説してきました。
作業した感想は、「他のリールの構造とほとんど同じ」ということ。
もちろん、メカニカルブレーキノブ部など特殊構造の部分もありますが、それはメインではないパーツ。
興味があったので分解しましたが、メカニカルブレーキ部は、普通のオーバーホールで分解清掃をやる必要があるとは感じませんでした。
(水没させたり海水使用ならした方がよいでしょうが…。)
メインフレーム部分についていえば、16アルデバランBFSやアルデバランMGLのように細かいパーツの集合体というわけでもなく、バンタムMGLのようなオリジナル構造でもない。
メタニウムなどと同じような構造なので、それほど分解することに身構える必要はないと思います。
個人的には、アルデバラン系の分解の方が面倒くさいです(^^;)。
巻き感が悪くなってきたりシャリ感を感じるようになったら、一度自分で清掃・グリスアップに挑戦してみるのが良いと思います。
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