バスの視覚について

「偶然釣れた」ではなく「狙って釣った」と言える釣りをするためには、ターゲットであるバブラックスのことを知ることが大事です。

ブラックバスを知るということは、ブラックバスの生態や習性を知ること。

この記事では、目の機能-「ブラックバスの視覚」について解説していきます。

できるだけ信頼性が高い内容を紹介するために、科学的根拠のある資料を調査してまとめた内容です。


ブラックバスの視力について

一般的に魚の視力は低いと言われ、Googleで「魚の視力」と検索して出てくる記事でも「視力は0.1~0.5」ぐらいという内容が多い。

それでは、バスの視力はどれぐらいなのか?

眼から計算された視力は0.1

ブラックバスの視力は、鹿児島大学名誉教授の川村軍蔵氏が発表した2002年の論文にて発表しています。

川村氏は視細胞の一種である錐体細胞の密度と眼のレンズの焦点距離から視力を計算。その結果、ブラックバスの視力は0.10だったと述べています。

The visual acuity calculated from the cone density and the focal distance of the lens was 0.10.

出典:GUNZO KAWAMURA, TOSHIHISA KISHIMOTO, “Color vision, accommodation and visual acuity in the largemouth bass”, Fisheries science, 2002 Volume 68 Issue 5 Pages 1041-1046
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fishsci1994/68/5/68_5_1041/_article/-char/en

川村氏はその後出版した著書でも0.10~0.17と述べています。

ちなみに、ほとんどの魚の視力は0.10から0.50の間なので、バスの視力が特別悪いわけではありません。

ブラックバスは近視ではない

バスの視力が0.10ちょっとぐらいと聞くと、

  • バスの視力は悪い。
  • バスは物をはっきり見ることができない。

と思ってしまうかもしれませんが、それは少し違います。

人の目はレンズである水晶体を薄くしたり膨らませたりしてピントを合わせます。しかし、魚はレンズを前後に動かしてピントを合わせている。

つまり、人と魚はピントを合わせる仕組みが違うのです。

ヒトは眼のレンズの厚さを変えて遠近調節するが、魚は眼の硬いレンズを微妙に前後に動かして正確に遠近調節をするので、遠くの物の像が鮮明に結像する。つまり、魚の場合、視力が低くても近視とは言えないのである。

出典:川村軍蔵 『魚の行動習性を利用する 釣り入門 化学が明かした「水面下の生態」のすべて』 22Pより引用、株式会社講談社、2011年

視力が0.1ぐらいならルアーの形や模様なんてわからないと思ってしまいますが、そんなことはないようです。

ブラックバスは45m離れた物もプランクトンも見える

それでは、ブラックバスはどれぐらい遠くの物が見えるのか?

アメリカのルアーメーカー「YUM」のブログにて、ミシシッピ州立大学・教授のハル・シュラム氏が意見を述べています。

「バスは澄んだ水の中の50ヤード(45m)離れた4インチ(10cm)の物体を見つけることができ、そして微小な動物性プランクトンを見ることができると、ハル・シュラム氏は言います。

Bass can detect a 4-inch object 50 yards away in clear water, and they can see microscopic zooplankton.

出典:BASS SCIENCE – HOW BASS SEE (October 1, 2014), “Yum Baits”
https://www.yumbaits.com/blog/how-bass-see/

私は「本当にバスはそこまで見えるの?」と思ってしまいました(^^;)

まあ、そこまで遠くが見えるほどのクリアウォーターのフィールドは、数が少ないでしょうが…。

水中が濁っていても見える?

バス釣りのフィールドは、どちらかといえば濁り気味のフィールドの方が多いでしょう。

では、濁った水のフィールドや悪天候で水が濁ってしまったとき、ブラックバスはどれぐらいの距離が見えるのでしょうか?

今まで私がバス釣り関連の雑誌や本を読んだかぎりの記憶では、「濁った水の中では、バスは数十cmしか見えない」という内容が多かったと思います。人がゴーグルをつけて潜っても、同様に数十cmぐらいしか見えないでしょう。

しかし川村氏によると、濁った水中でも魚は物が見えると述べています、

水中で離れた物の輪郭がボンヤリして不鮮明になるのは、水中の物のコントラストが低くなってしますからです。

そこで、どれだけコントラストが鮮明ならば魚が物を見えるかを、川村氏はブルーギルを使って実験しました。

その結果ブルーギルのコントラスト識別感度は、ブルーギルと同じ実験を行った学生たちのコントラスト識別感度の「55倍」もありました

実験された魚はブルーギルですが、バスと同じ「スズキ目、サンフィッシュ科」の魚で、生息域も似ています。ブルーギルと同レベルかはわかりませんが、バスも人間より高いコントラスト識別感度を持っている可能性は高いでしょう。

コントラストがハッキリわかるということは、つまり「水草・ウィードだらけのフィールドだから、緑色のルアーを選択して背景の色と同化させる」ということをしても、魚には普通に見えている可能性が高いです。

水草やウィードが多いフィールド

また、濁った水に透明の釣り糸が溶け込んだように馴染んで見えない…と人の目には見えますが、それもコントラスト識別感度が高い魚には普通に見えているかもしれません。

ブラックバスの視野について

次は、ブラックバスの視野について解説していきます。

片目の視野は210度

アメリカのプラドコ社で活躍されているヒロ内藤氏は、自身のDVD「THE ANSWER Game1 バスの生態学」にて、「バスの片目の視野は約210度」と述べています。

バスの視野が広いのは、眼が顔の横にあって眼が飛び出ているからです。

顔の横にあって、少し飛び出ているバスの眼

距離感を測る両眼視野は狭い

視野が広くても、片目では距離感をうまくつかむことができません。距離感を正確に把握するためには、目標を「両眼の視野」に入れる必要があります。

魚の両眼視野は前方だけになるので、両眼視野は狭くなります。

死角は後ろと真下

ブラックバスをはじめ、魚の死角は「真後ろ」と「真下」になります。

目が顔の横にあって幅広い範囲を見れるので、死角はなり少ないです。

最も物を見やすい方向

視野の中で物が一番よく見える方向を「視軸」といいます。例えば、海の大型表層魚の視軸の方向は「前上方」、中層魚は「前方」底棲魚は「前下方」が多い。

それではブラックバスはどうなのか?

川村氏は自身の論文や著書の中で、バスの視軸の方向は「前方(鼻から側頭部の方向)」としました。

対してヒロ内藤氏は、バスが最も見やすい方向は「前方斜め上側」と述べています。


ブラックバスの色覚について

現在では、「ブラックバスは色覚を持っている(色が見える)」ということを多くの人が認めています。

では、バスはどのように色の世界を見ているのか?

色を感じるセンサーの種類

まず、目の構造をザックリと解説します。

光がレンズ(水晶体)を通り、目の奥の網膜にあたります。網膜には光を感じとるセンサーとして、「桿体細胞」と「錐体細胞」の二つあります。

2つの細胞には、下記のようなちがいがあります。

  • 光をよく感じとって暗所でも働く「桿体細胞」
  • 明るい場で色を感じとる「錐体細胞」

そして人間の目には「赤・緑・青」の3色に反応する、3種類の錐体を持っています。人は「赤・緑・青」の3色のセンサーの反応で、脳が色を判断します。

ブラックバスの目のセンサーは「赤と緑」の2色型

それでは、ブラックバスは何色のセンサーを目に備えているのか?

2018年にアメリカで公開された論文にて、「ラージマウスバスは緑色に敏感な1対の錐体と赤色に敏感な2対の錐体を持っている」と発表されました。

この論文ではラージマウスバスの色覚について、下記のようなことが書かれていました。

  • (暗所で働く)桿体細胞と、「赤と緑」の2色性の視覚を持つ。
  • 赤と緑の2色を最もカンタンに見分けることができる。
  • バスはチャートリュースイエローと白色を見分けることが苦手。
  • バスは青色と黒色を見分けることが苦手。

出典:Lisa D Mitchem, Shannon Stanis, Muchu Zhou, Ellis Loew, John M Epifanio, Rebecca C Fuller. “Seeing red: color vision in the largemouth bass” Current Zoology, Volume 65, Issue 1, February 2019, Pages 43–52
https://academic.oup.com/cz/article/65/1/43/4924236

また、アメリカの有名なブラックバス研究家に、キース・ジョーンズ博士(Dr. Keith Jones)という人物がいます。

彼が書いた「Knowing Bass: The Scientific Approach To Catching More Fish」は、バスの生態研究の本として高い評価を受けています。

そのジョーンズ博士も、バスの色を感じるセンサーは「赤と緑の2色型」主張しています。

ジョーンズ博士の知見については、つかじーさんのブログ「雄蛇ヶ池 蛇の道は蛇」の中の、下記の記事にて詳しく解説されています。

>(続編)ジョーンズ博士「バスの色判別能力は人間よりも低い」★バサー記事はメダカの研究結果

ブラックバスはルアーの形や模様がわかるのか

ルアーには、似たような形のルアーや細かな模様がペイントされたルアーがたくさんあります。

リアルカラーに描かれた鱗の細かい線や、マットタイガー系の細かい点やラインの模様を、バスはしっかり認識しているのでしょうか。

人間以上の形状識別能力を持つブルーギル

調査された魚はブルーギルですが、非常に興味深い形状識別能力の実験があります。

川村が行った実験で、下の写真のような図をブルーギルに見せて、決められた図の方だけで餌を摂る実験が行われました。

ブルーギルの形状識別能力で使われた図形
出典:川村軍蔵 『魚の行動習性を利用する 釣り入門 化学が明かした「水面下の生態」のすべて』 26Pより引用、株式会社講談社、2011年

そしてブルーギルは、●や■という図形のAグループだけでなく、ドットパターンで作られたBやCのグループも完璧に区別したそうです。

Cの図はまだしも、Bの図をパッと見せられたぐらいでは識別できる自信がありません(^-^;。研究室の学生さん自身も同じ図形BとCの識別テストを行ったそうですが、図形Bの識別はできなたったそうです。

ブルーギルの視力は「0.09」ぐらいで、ブラックバスよりも同じかちょっと悪いぐらいの視力です。

それでも、ブルーギルは人間以上の形状識別能力を発揮したのです。

ブラックバスも形状識別能力に優れている

バスでの同様の実験記録はないので、バスがブルーギルと同じレベルの識別能力を持っているかは断定できません。

ラージマウスバスの目を研究した川村氏の論文では、「ラージマウスバスの網膜は動きと形状の知覚の両方に特化しる」ということが書かれています。

Thus, the retina of the largemouth bass is specialized to both movement and form perceptions.

出典:GUNZO KAWAMURA, TOSHIHISA KISHIMOTO, “Color vision, accommodation and visual acuity in the largemouth bass”, Fisheries science, 2002 Volume 68 Issue 5 Pages 1041-1046
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fishsci1994/68/5/68_5_1041/_article/-char/en

バスも形状の知覚に優れているならば、ブルーギル以上か以下かはわかりませんが、似たレベルの形状識別能力を持っていると考えられるでしょう。

ブラックバスは暗闇の中でも見える

暗い場所でも光を感知する「桿体細胞」が目にあるので、バスは暗い場所でも物を見ることができます。

それでは、暗い場所でどれだけバスは物をみることができるのか?

ハル・シュラム氏は「ローライトの状態では、バスは私たちが見るのに必要な光の量の約10分の1しか必要としない」と述べています。

In fact, in low light conditions bass only need about one-tenth of the amount of light we need to see.

出典:BASS SCIENCE – HOW BASS SEE (October 1, 2014), “Yum Baits”
https://www.yumbaits.com/blog/how-bass-see/

人間よりも少ない光の量で、バスは物を見ることができるようです。

ブラックバスの視覚について・まとめ

以上、ブラックバスの視覚についての研究結果をカンタンに解説しました。

ブラックバスの視覚は予想以上に高いもの。私はちょっとバスをなめていたのかも…(^^;)

バスや魚の生態を科学的研究した本や論文を読むと、今まで漠然とイメージしていた魚の世界が大きく変わりました。魚の能力は、予想よりも遥かにすごい!

魚を科学的に解説した本の中で、釣り人が最初に読むのにオススメなのが、『魚の行動習性を利用する 釣り入門―科学が明かした「水面下の生態」のすべて』です。

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ブラックバスについての記述は少ないですが、多くの釣り雑誌の解説とは違う、新しい魚の世界を私は学ぶことができました。魚の生態や釣りを科学的に考察されています。

この記事で解説したブルーギルの実験の詳細も書かれているので、バス釣りをする上での参考になると思います。

今までの釣りの経験のに科学的考察が加わると、釣り技術の上達の助けになるでしょう!