
この記事では、シマノの「アンタレス 5」のオーバーホールの様子・やり方について、詳しく解説していきます。
友人からアンタレス5(スプールは深溝に変更)のオーバーホール依頼を受けて作業することになったのですが、初代型のアンタレスを分解するのは、今回が初めてです(^-^;
ネット上では、「初代アンタレスの分解は難しい」というような意見が多いので、少し不安もありますが…しかしオーバーホール好きの人間として、一度はやっておきたいリールでもあります。
パーツを無くさないように、慎重に作業を開始します!! 失くしたら、もうメーカーからのパーツ供給も無いので…。
サイドプレートを外す
最初の作業で、SVSブレーキ側のサイドプレートを外します。このサイドプレートを最初に外す工程が、初代型アンタレスの特徴ですね。
まずは、スプールを抜き取ります。
そして、最初にして一番の難関!? サイドプレートを保持している「Eリング」を外します。
サイドプレートのシャフト軸に、「Eリング」「座金」「ゴム輪」「円柱の部品」があります。Eリングを外すことで、これらのパーツとシャフト軸を抜くことができます。
私はEリングとシャフト軸の隙間にマイナスドライバーの角を入れ、回転させてテコの原理で押し出すように外しました。
この作業ができないと、初代型アンタレスのオーバーホールはできません…(-_-;)
ハンドルを取り外す
次はハンドルを取り外します。このハンドル部分も少し特徴があります。
まず、ハンドルの裏にあるネジを2本外します。
ネジを外せば、ハンドルはカンタンに取れます。そしてナットとプレートが見えます。
レンチでナットを外し、プレートやスタードラグを外していきます。
ドラグの次にはバネ、ナット、座金、<>型の座金2枚、薄い座金、ベアリングがあります。
パーツを順番に外し、並べておきましょう。このあたりの構造は、最近のリールと同じです。
ハンドル部のパーツは、上の写真の通りになります。ベアリングが少し錆びている…。
サムレストやサイドボディを取り外す
次に、リール上部のサムレストとレベルワインドガード、そしてハンドル側のサイドボディを分解します。
これらは合計7本のネジを外すことで分解できます。
上の写真で見えるネジが4本。そして、
ボディの穴から細いドライバーを差し、ネジ1本を外します。
各ネジの長さは、下の写真の通りです
長いネジと短いネジがあるので、位置が分かるようにしておきましょう。私は位置が分かるように並べてテープで固定しています。
そして、レベルワインドの近くにネジが2本。
最後の2本もドライバーで外します。
合計7本のネジを外すと、「サムレスト」「レベルワインドガード」「サイドボディ」の3つが簡単に外れます。
ついでなので、サムレストとレベルワインドガードに付いている金色のプレートも外しました。
私的には、初代型アンタレスの特徴的な構造はここまでです。後半の部分は、基本的な構造は最近のリールと大体同じです。まあちょっと違う箇所もありますが…(^-^;
ドライブギア・ピニオンギアを取り外す
さて、いよいよ心臓部のギアとご対面です。ドライブギアとピニオンギアを取り外します。これは抜き取るだけの簡単な作業です。
グリスが泥のように黒くなっています…(-_-;)
クラッチツメと噛み合うストッパーギアは、ドライブギア軸と一体になっています。
ドライブギア軸を取り外す
次はドライブギア軸の取り外しです。ネジ2本で固定されているので、それを外します。
ネジを外せば簡単に抜けるのですが…なかなか抜けない(^^;)。
頑張って抜き取ると、ご覧のようにベアリングが錆びて、少し固着していたようです(ノ´Д`)。
Eリングを外して分解します。
これで、ドライブギア軸の分解作業は完了。
クラッチカムを取り外す
次の作業はクラッチカムの取り外しです。最近のベイトリールとは少し構造が違いますが、まだシンプルです。
銀色の押さえ板とネジを2本外します。その時、クラッチバネの圧力でパーツが吹っ飛ばないように注意します。
クラッチプレートの構造が、最近のリールとは違いますね。また、この部分のベアリングも錆びてゴリゴリでした(T_T)
クラッチレバーを取り外す
次はクラッチレバーを取り外します。これはEリングで固定されているので、まずEリングを外します。
Eリング、座金、プレートを外しました。あとは、パイプを抜くとレバーが外れます。
これでクラッチレバーの分解が完了しました。いろんなパーツがEリングで固定されているので面倒ですね(-_-;)。
レベルワインド・ウォームシャフトギアを取り外す
分解作業もいよいよ大詰め。レベルワインドとウォームシャフトギアの取り外しです。
まずは、ウォームシャフトピンのフタをマイナスドライバーで外します。
ウォームシャフトピンや座金を抜き取り、次はウォームシャフトギアを固定しているEリングを外します。初代型アンタレスも、ウォームシャフトギアから水が浸入しないためのフタがあります(^^)。
このEリングを外せば、レベルワインドやウォームシャフトギアのパーツをバラバラと外せます。この部分のパーツは下の写真のとおりです。
この時のアンタレスでは、ウォームシャフトギアを支えるパーツはベアリングだったんですね。12アンタレスやメタニウムMGLでも、今はプラスチックブッシュですし…。
写真のようにベアリングは錆びるから、プラスチックブッシュに変わったのかも…。
メインフレームにはガイド棒が1本残っていますが、外して清掃する必要は無いと思います。私は外しましたが…(^-^;。
これで、メインフレーム部分のパーツの分解は完了です!!
ハンドルノブの分解
ハンドルノブも分解して、ベアリングを清掃する必要があります。
そしてノブキャップを外すと…不思議なナット型のネジ?があります。
縦溝があるので、マイナスドライバーで外すことができました。
サイドボディのベアリングを取り外す
最近のベイトリールのメカニカルブレーキノブのベアリングは、分解せずに簡単に外せます。
しかし初代型アンタレスは、ボディの内側からしかベアリングを外せません。
面倒で交換されてなかったのか、この部分のベアリングはゴリゴリでした(^-^;
また、SVSブレーキ側のベアリング。これは簡単に外せるものですが、このアンタレスのベアリングは錆びて固着していました!!(-_-;) 外すのに20分ぐらいかかりました…。
これが中古リールの怖い所ですね。
とりあえず、これでアンタレス5の分解は完了しました!!
そしてパーツ洗浄へ…
全ての分解ができたので、次はパーツ洗浄です。
このパーツ洗浄には1時間以上かかりました(ノ´Д`)。
錆びや泥汚れなどがしつこくこびり付いていたので、一度の脱脂洗浄やブラシと洗剤での洗浄では、汚れを落としきれませんでした。
古い機種なので、中古ショップに長年陳列されていたのか分かりませんが、なかなか大変な洗浄でした。
オーバーホールせずに使用していたら、すぐに傷んでいたと思います。古いリールを中古で購入された人は、最初にオーバーホールをするのをオススメします(^_^)!!
アンタレス5のオーバーホール・分解工程のまとめ
とにかくネット上では「難しい」と噂されていた初期型アンタレスの分解。
私が実際に作業して感じたところでは、たしかに最初のサイドプレートのEリングを外すところなどは面倒でした。しかしドライブギアの取り外しぐらいからは、リールの基本構造は最近のリールとそこまで変わらないかなと思いました。
私的には、以前作業した12カルカッタの方が、リールの構造が違うので難しかったです(^-^;。
たしかにメンテが面倒なリールですが、しかし完全アルミボディの剛性は、まだまだ使える頼もしさを感じました!!
次に、アンタレス5の組立工程について解説します。
ハンドル、サイドボディの組立て
最初に私はハンドルやサイドボディなどの周辺パーツを組み上げておきます。手がグリスでベタベタになるまえに…(^_^;)
ちなみに、ハンドル側サイドボディにはめるメカニカルブレーキ部分のベアリングは、内側からしか入れることができません。これが初代アンタレスの難点です。
この時にしっかり洗浄と注油をしておいてください。
レベルワインド・ウォームシャフトギアの組立て
メインフレームの組立てを開始します。まずは、まずはレベルワインドとウォームシャフトギアです。
まずはガイド棒の両端をEリングで固定。これは分解しなくてもよかったパーツですが…(^^;)
レベルワインドとウォームシャフトギアのパーツを並べました。パーツの種類はほぼ12アンタレスと同じですね。
なお、組み立てる時に使うオイルとグリスは、全てBOREDの製品を使用しています。
BORED製品については、「オーバーホールで使うオイルとグリスは全てBORED!【高い耐久性】」のページで詳しく解説しています。
私がリールのオーバーホールで使っているBored(ボアード)のオイルとグリスを紹介! 耐久性が高い100%化学合成油のケミカルです。
まずはガイド棒にレベルワインドを通します。
次に、ウォームシャフトギアとフタ、ベアリング、ギアを合体させます。
合体させたウォームシャフトギアとパイプをレベルワインドに通します。フタの部分にはパイプやガイド棒にはまるミゾや突起があるので、うまく当ててください。
そして反対側もフタをはめて座金を入れ、Eリングで固定します。フタの溝とパイプを上手くはまる位置があります。
最後にウォームシャフトピンを入れてフタをしたら、ウォームシャフトギア・レベルワインドの組立ては完了です。
一応ギアを手で動かして、レベルワインドが左右移動する途中で引っかかりがないかを確認してください。
クラッチ組の組立て
まずはクラッチレバーの組立てです。
パーツの順番は上の写真のようになります。各パーツを組立て、最後にEリングで固定します。グリスも忘れずに(^^)。
レバーの固定が完了したら、次はクラッチカムの組立てです。
クラッチプレートの形状は古いですが、他のパーツは最近のものと同じです。
まずはプレート、ツメ、バネを写真のように配置します。
そしてクラッチカムを、ツメの突起やプレートの溝にうまくはめましょう(うまく説明できない…(=_=;))。パチンッとはまる位置があります(汗)。
あとは、バネの圧力でパーツが吹っ飛ばないように押さえながら、銀色の押さえ板をネジで固定します。
これでクラッチ組の組立ては完了です。
ドライブギア軸の組立て
次はドライブギア軸の組立てです。ストッパーギアとドライブギア軸が一体化している以外は、最近のリールと構造の違いはありません。
上の写真の順番でパーツを組み上げます。薄い座金も忘れずに。ベアリングのサイズは、最近のリールのベアリングより小さかった気がします。
Eリングで固定します。そして、2本のネジでメインフレームに固定したら、ドライブギア軸の組立ては完了です。
ドライブギア・ピニオンギアの取り付け
次はドライブギアとピニオンギアの取り付けです。
ここも特に迷うような所はありません。順番通りにドラグ板やギアをはめこんでいきます。
ドロドロだったギアが新鮮なグリスでリフレッシュ!!(^^)
特殊構造?サイドボディ・サムレスト・ガードの取り付け
さて、そろそろ初代型アンタレスの組立ての本番です(^^;)。これからが初代型アンタレスらしい工程です。
初めに、サムレストやレベルワインドガードの金プレートを取り付けておきます。
まずは、サイドボディをメインフレームと合体させます。
そしてサイドボディをネジ2本で固定します。今は仮止めなので、強く締めなくでOKです。
ボディのネジの位置はこの2つ。
次は私流の順番になってしまいますが、先にハンドル軸のナットを取り付けます。下の写真のパーツですね。
理由は、クラッチのチューブが抜けるのを防ぐため。
ドライブギア等の取り付けの時、ドラグ板の押さえの上にクラッチインナーチューブをはめました。あれは溝にはまっているだけなので、ボディを傾けたりすると抜けてしまう場合があります。
色々なパーツのネジ止めをしようとすると、作業しやすいようにボディを傾けたりしますよね。その時に抜けてしまったことがあるので、私は先にナット締めまで行います。
次は、レベルワインドガードの取り付けです。メインフレームにはめた後、細いドライバーを穴に通してネジ止めします。
次は天井のサムレストです。はめこんだあと、まずは横からネジ止め。
この時、仮止めだったサイドボディのネジもしっかり締めてください。
そして、レベルワインド側も2本のネジを締めます。
これで横のサイドボディ、上のサムレスト、前のレベルワインドガードの取り付けが完了しました。
ブレーキ側サイドプーレートの取り付け
いよいよメインイベントの、サイドプレートの取り付けです。
分解する時はカンタンでしたが、組立てるときはなかなか上手くいかず、手こずりました(^_^;)。さすが有名な難所です。
まず、サイドプレートをメインフレームに通し、円柱パーツ、ゴム、座金をシャフトに通します。
そしてシャフトをサイドボディの穴に入れ、シャフトにEリングをはめて固定できれば完了。…なんですが、Eリングをはめるのに手こずりました。
私が感じたこの部分のポイントは2つ!!
- ゴムパーツをしっかり押し込む
- 2つの円柱パーツの向きが互い違いになるようにする
1番目のゴムパーツについては、ゴムをしっかり押し込まないとEリングをはめることができませんでした(-_-;)。
この部分のパーツを私なりに図にしてみました(分かりにくくてすみません(^-^;)
SVS側サイドプレートのシャフトの根本から、ゴム→円柱パーツ→円柱パーツゴム→座金というパーツの順番になっています。そしてシャフトにはミゾ(図で紫色)が掘られていて、そこにEリングをはめるようになっています。
しかし普通にパーツを入れただけでは、ゴムと円柱のはまり方が甘いせいか、座金がミゾの位置に覆いかぶさった状態になっていました。ゴムをしっかり押し込んで組み上げても、座金がミゾの位置にあるためEリングをはめることができませんでした。
そこで私はペンチを使って、上の図のように圧力をかけて根本の方に押し込みながら、ミゾにEリングをはめ込みました。ペンチで押し込まないと、ミゾが常に座金に隠れていたので…(-_-;)
2番目の円柱パーツについては、向きに注意が必要です。
円柱パーツは2つありますが、円柱の側面が片面だけ平になっています。その平面が互い違いになるように組まなければなりません。
Eリング側の円柱パーツの曲面が、写真のように手前に来るように組んでください。
この2つの試行錯誤で、この工程で時間を使ってしまいました。
スタードラグ・ハンドルの取り付け
さて、最後はスタードラグとハンドルを付けるだけです。
ナットはあらかじめ付けておいたので、バネとスプリングとプレートを付け、ナットで固定します。
そしてハンドルを付け、2本のネジで固定します。
これでアンタレス5のオーバーホールは完了です!!
アンタレス5の組立工程のまとめ
難しいと言われている初代アンタレスのオーバーホール。たしかに、最後のサイドプレートのEリングは苦労しました…。
しかし、パーツ数が他より多いというわけではありません。パーツ数だけでいえば、12アンタレスの方が多いです。
SVS側サイドプレートの付け外しが難しい事とEリングの数が多いという2点以外は、普通のリールとそんなに変わらないと感じました。
ドライブギアの所までいくまでの工程数が多いという点で、たしかにメンテナンスするには面倒くさいリールでありますが…。
思い切って一言でいえば、SVS側サイドプレートの付け外しさえできれば、オーバーホールはできると思います(^_^;)。
メンテナンスが面倒なリールですが、時々オーバーホールしないと、今回作業したリールのように内部では汚れや錆びが酷くなっているかもしれません。
しかしキチンと清掃・グリスアップをすると、とても滑らかな巻き心地が復活しました。スプール軸のベアリングを交換したことで、スプールの回転が間違いなく良くなりました。
しっかりメンテナンスすれば、初代アンタレスはまだまだ活躍してくれそうです!
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